脊椎班

脊椎

われわれが得意とするのは手術によって①神経の圧迫を解除すること②体の土台となる脊椎の支持を維持もしくは再建することです。脊椎疾患は頭蓋頚椎から骨盤まで多岐にわたるため、手術も椎間板ヘルニア手術といった局所のものから脊柱変形といった体のバランスまで考えた大きな手術まで様々な方法を用いて対処が必要となります。また、先天性疾患の小児から、骨粗しょう症が基礎にある高齢者まで年齢や基礎疾患も幅が広く注意しなければならないこともそれぞれの患者さんで異なります。最も大切なのは一人ひとりの患者さんに対して自分の家族だったらどうするのかを考え、最善を尽くせるように努力することだと考えています。できる限り手術以外の方法を模索し手術以外に患者さんがかかえる疾患を改善させる方法がない場合や手術が他の治療法を大きく凌駕する場合にはそれぞれの患者さんにあった手術方法を選択し、その手術に全身全霊で取り組むことがわれわれの使命だと考えています。脊椎疾患でお悩みの患者さんは一度当班へご相談にお越しください。

代表的な疾患と治療

脊柱変形(先天性側弯症、思春期特発性側弯症、変性後側弯症といった成人脊柱変形、首下がり など)

脊柱変形とは、先天性側弯症、思春期特発性側弯症、変性後側弯症といった成人脊柱変形、首下がりなどのことをいいます。
これらの疾患に対する診断や手術の時期の判断、手術自体は非常に難しく多くの知識と高度な手術手技が必要となります。時には手術の行う医師に対し、信念や哲学が要求されることもあります。手術は様々な手術手技を用いて変形を矯正しなければなりません。変形が高度になると、骨切りといった矯正法や脊椎に前後両方から進入する前後合併法など難易度の高い矯正法が必要となります。

このように難しい手術を安全に行うためにわれわれの施設では手術の際には脊髄モニタリングといった矯正による神経麻痺を予防するための機器を利用しています。
術後に全身管理を要する場合には集中治療室で数日経過を観察すること可能です。また、手術前に自己血を貯血することや、手術時に出血した血液の約4割を体に戻すことが可能な回収血システムを用いてできる限り輸血をせずに手術を行えるよう工夫しています。そして、術後に比較的長期のリハビリを要する場合には隣接するリハビリテーション病院へ転院して専門的リハビリを行い慎重な経過観察を行うことで患者さんが安心してリハビリに取り組める環境が整っています。

54才女性 変性後側弯症

20代の頃より側弯に気付き、30代の頃より腰痛を認めていたが放置していました。
腰痛が悪化し40代で当院を紹介受診されましたが、その際ADLの障害は強くなく本人の希望もあり経過観察していました。その後、徐々に腰背部痛と後側弯変形が進行し手術の方針となりました。手術は後方要素の骨切りと多椎間の椎体間固定を併用し、第9胸椎〜骨盤までの矯正固定術を施行しました。術後腰背部痛は改善し、手術後の経過に非常に満足されています。

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16歳女性 思春期特発性側弯症

小学校5年より側弯を指摘され、近医整形外科より当院紹介受診となりました。装具療法を行いましたが、側弯の進行を認めたため、16歳で手術加療の方針となりました。手術は第5胸椎から第12胸椎まで脊椎固定術を施行しました。術後経過は良好で側弯の進行は認めていません。

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変性疾患(頚髄症、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、腰椎分離すべり症など)

加齢性変化に伴う関節の変形や靱帯の肥厚が神経を圧迫することで手足にしびれや痛み、運動麻痺、間欠性跛行(歩行で下肢のしびれや痛みの悪化を認めるが休憩すると軽快する)など多彩な神経症状が認められます。頚髄症では細かい作業(箸や書字、ボタンなど)がやりづらくなる場合や、ふらつきや痙性歩行といったぎこちない歩行となる場合もあり、症状が進行すると車いす生活を余儀なくされることもあります。手術は圧迫されている神経の除圧を行うことが基本ですが、すべり症や分離症が原因で脊椎に高度な不安定性が考えられる場合には、スクリュー固定や骨移植が必要となります。

頸椎椎間板ヘルニア、腰椎椎間板ヘルニア

頚椎椎間板ヘルニアに伴う症状には神経圧迫の形態によって2つの病態があります。
ひとつ目の病態はヘルニアが脊髄という本幹を圧迫する場合で加齢性変化に伴う関節の変形や靱帯の肥厚が神経を圧迫することで手足にしびれや痛み、運動麻痺、間欠性跛行(歩行で下肢のしびれや痛みの悪化を認めるが休憩すると軽快する)などの頚髄症症状を呈します。保存加療に抵抗性である場合は手術が必要となります。手術の際にはヘルニアは脊髄を前方から圧迫しているため、頚椎では前から椎間板ごとヘルニアを切除する前方手術が適応となります。
ふたつ目の病態はヘルニアが神経根といった神経の枝を圧迫する場合で上肢や肩甲骨に放散する強い痛みを生じます。急に肩が挙がらなくなる、指が伸ばせなくなる頚椎症性筋萎縮症といった比較的稀な病態もあります。運動麻痺を伴った場合には早期に手術を検討しなければなりませんが、神経根のみの圧迫で上肢や肩甲骨の痛みが症状の中心であれば消炎鎮痛剤や神経ブロックによって多くの場合症状の改善が期待できます。
また、腰椎椎間板ヘルニアにおける主症状は腰痛や下肢の強い痛み、運動麻痺です。消炎鎮痛剤や神経ブロックで改善が得られない場合には椎間板内酵素注入療法を行っています。この治療で8割近くの患者が手術を回避できており、非常に有益な治療法と考えています。椎間板内酵素注入療法は今のところ頚椎には適応がありません。これらの治療で改善が得られない場合のみ手術を行っています。

靭帯骨化症(後縦靭帯骨化症・黄色靱帯骨化症)

後縦靭帯骨化症・黄色靱帯骨化症は原因が未だ不明で、国で難病に指定されています。
後縦靭帯骨化症の多くは頚椎に発生し、交通事故などほかの理由で撮影されたレントゲンで偶発的に発見されます。神経症状がないか軽微であれば経過観察のみで問題はありませんが、加齢性変化に伴う関節の変形や靱帯の肥厚が神経を圧迫することで手足にしびれや痛み、運動麻痺、間欠性跛行(歩行で下肢のしびれや痛みの悪化を認めるが休憩すると軽快する)などの頚髄症症状を呈した場合の薬物加療に多くが抵抗性であり手術が必要となります。

また、黄色靱帯骨化症は下位胸椎に好発します。急激に進行する下肢の麻痺を呈し緊急入院となることも稀ではありません。後縦靭帯骨化症と同じく神経症状がないか軽微であれば経過観察のみで大丈夫です。黄色靱帯骨化症は脊椎後方の靱帯が骨化する病態であり、手術においては後方から骨化巣を摘出または浮上させることが必要となります。

59歳 男性 頚椎後縦靭帯骨化症

10年前から左上肢のしびれを自覚し近医整形外科で頚椎後縦靭帯骨化症の診断で通院リハビリを行っていました。左上肢の脱力も認めるようになり、手術目的で当院紹介受診となった。
手術は前方除圧固定術(骨化巣浮上)を施行しました。術後経過良好で、左肩挙上筋力のわずかの低下は認めていますが、もとの仕事に復帰され手術後の経過に非常に満足されています。

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脊髄腫瘍

多くが良性の腫瘍であり、発生する部位によって症状が異なります。頚椎に発生すれば上下肢・胸椎や腰椎に発生すれば下肢にしびれや麻痺・歩行障害が生じる可能性があります。
良性腫瘍の多くは、神経症状がないか軽微であれば他の脊椎疾患と同様に経過観察のみで問題はなく、また神経症状を呈した場合でも手術で摘出することで根治が得られます。稀に悪性腫瘍も発生しますが、造影剤を使ったMRIなどで手術前に良性や悪性のどちらであるのかなど多くは鑑別が可能です。悪性腫瘍の場合には手術のみでは根治は難しく、追加で化学療法や放射線治療が必要となります。

転移性脊髄腫瘍

脊椎は癌の転移が好発する部位であり、病的な骨折に伴う腰痛や背部痛、癌による脊髄圧迫による麻痺が発生します。これらに対する手術は準緊急かもしくは緊急手術を要することが多く、当院では緊急手術にも対応できる体制が整っています。また、原発巣が手術で切除されている転移性脊椎腫瘍の場合には脊椎転移部位をすべて切除して根治させる手術も有用であり、われわれはこのような難しい手術にも取り組んでいます。

脊椎外傷

交通事故や高所からの転落外傷といった高エネルギー外傷のものから高齢者の骨粗しょう症に伴う軽微な低エネルギー外傷まで多岐に渡ります。脊椎に骨折が生じると強い痛みと運動麻痺が発生するため準緊急かもしくは緊急手術を要します。当院では救命センターのスタッフが高エネルギー外傷を積極的に受け入れており、緊急手術と術後管理をしっかりと行える体制が整っています。

スタッフ

神﨑 浩二

教授

神﨑 浩二

KOJI KANZAKI

専門領域

●脊椎外科

認定医・専門医など

日本整形外科学会専門医 日本整形外科学会脊椎脊髄病認定医 日本整形外科学会スポーツ医 North American Spine Society(正会員) 義肢装具等適合判定医 日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医 日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医 日本整形外科学会 代議員 神奈川整形災害外科研究会 会長 日本脊椎インストゥルメンテーション学会 評議員 東日本整形災害外科学会 評議員

講師 医局長

瀬上 和之

KAZUYUKI SEGAMI

専門領域

●脊椎外科

認定医・専門医など

日本整形外科学会専門医 日本整形外科学会脊椎脊髄病認定医 脊椎脊髄病指導医 Spine reviewer

助教

矢倉 一道

KAZUMICHI YAGURA

専門領域

●脊椎外科

認定医・専門医など

日本整形外科学会専門医 日本体育大学ラグビー部 メディカルチェック担当医

助教

髙橋 秀

SHU TAKAHASHI

専門領域

●脊椎外科

認定医・専門医など

日本整形外科学会専門医

兼任講師

立野 慶

KEI TATENO

専門領域

●脊椎外科

認定医・専門医など

日本医師会認定産業医 日本整形外科学会 専門医 義肢装具等適合判定医 身体障害者福祉法第15条指定医 North American Spine Society 正会員

石田 将也

MASAYA ISHIDA

専門領域

●脊椎外科

認定医・専門医など

日本整形外科学会専門医 日本整形外科学会脊椎脊髄病認定医

斉藤 元

GEN SAITO

専門領域

●脊椎外科

認定医・専門医など

日本専門医機構認定整形外科専門医 日本整形外科学会脊椎脊髄病医 日本整形外科学会認定スポーツ医

助教(医科)

黒木 麻依

MAI KUROKI

専門領域

●脊椎外科

認定医・専門医など

日本整形外科学会専門医

助教

岡村 祐太朗

YUTARO OKAMURA

専門領域

●脊椎外科

認定医・専門医など

日本整形外科学会専門医

清家 直人

NAOTO SEIKE

専門領域

●脊椎外科

認定医・専門医など

日本整形外科学会専門医 日本整形外科学会 脊椎脊髄病認定医 日本脊椎脊髄病学会 認定脊椎脊髄外科指導医 日本リウマチ学会 リウマチ専門医 日本整形外科学会 認定リウマチ医 日本整形外科学会 認定リハビリテーション医 技師装具等適合判定医

実績

2015201620172018201920202021
頚椎 43 46 30 43 42 52 56
胸椎 8 28 31 4 10 16 14
腰椎 141 107 100 100 102 87 123
側わん症 19 26 32 22 26 27 27
脊椎腫瘍 7 4 10 4 6 10 6
その他 8 0 0 4 10 14 7
合計 226 211 203 177 196 206 233

受診される方へ

高度な専門医療を提供するため、
原則的に紹介外来制をとっています。
紹介状をお持ちでない患者様には、保険診療分とは別に選定療養費が必要となります。
初診時にはなるべく近隣の医療機関からの紹介状をお持ち下さい。
受診時の持ち物・診察の流れ等に関しての詳細は、病院ホームページにてご確認ください。

脊椎班からのお知らせ

  • 学会 脊椎

    第53回脊椎脊髄病学会学術集会(横浜 4.18.-20.)にて発表を行います

  • 脊椎 学会

    NASS Interrnational Annual Meeting(Bangkok 7.19-21.)にて発表を行います

  • 脊椎

    第52回日本脊椎脊髄病学会(札幌 4.13-15.)で発表を行います

  • 脊椎

    Spine Week 2023(Melbourne 5.1-5.)で発表を行います

交通アクセス

昭和大学藤が丘病院整形外科

〒227-8501 神奈川県横浜市青葉区藤が丘1-30
TEL:045-971-1151(代表)

昭和大学藤が丘リハビリテーション病院

〒227-8518 神奈川県横浜市青葉区藤が丘2-1-1
TEL:045-974-2221(代表)

関連リンク