上肢班
上肢班では、昭和大学藤が丘病院と昭和大学藤が丘リハビリテーション病院の両病院で、西中直也教授を中心に数多くの外来診療および入院・手術治療を行っております。肩関節、肘関節を専門とし、スポーツ外傷・障害そして変性疾患にも幅広く対応しており、数多くの外来診療および入院・手術治療を行っております。
整形外科でも、特に関節外科では手術の有無にかかわらず運動療法を中心にしたリハビリテーションが治療成績を左右する非常に大事な要素となりますが、両病院では、常時理学療法士・作業療法士のスタッフが在籍しており、急性期から回復期まで、一貫した医療を提供できる環境が整っています。特に上肢班では医師とリハビリテーションスタッフは定期的に勉強会で知識のアップデートを行い、学会活動や研究を一緒に行っております。
また、長年に渡り千葉ロッテマリーンズのメディカルチェック担当医を務め、近年ではスポーツ運動科学研究所との連携など、研究・教育分野においても力を入れています。横浜少年野球肘検診担当医などにも関わり地域医療にも貢献しています。
わが国のスポーツ健康科学分野の発展に寄与すべく、2015年4月に藤が丘リハビリテーション病院内に「スポーツ運動科学研究所」が設立され、当班教授の西中医師は、海外留学での基礎研究の経験を活かし、立ち上げより尽力してきました。
予防や疾病治療のための運動療法などを大きなテーマにし、整形外科医を中心に、内科医師・歯科医師・リハビリスタッフ・管理栄養士と連携し、それぞれの診療科・学部研究室のテーマを横断的に融合させた学際的な研究を行っています。
現在は、TEAM DAITO(大東建託)・日本体育大学(ラグビー部)・洗足学園音楽大学など、様々なジャンルのチームドクターとして、メディカルチェック(単純X線、MRI、歯科診察、血液検査、心電図、その他各種体力・筋力検査)を実施しています。
そして、選手および指導者に対し、検査結果のフィードバックだけでなく、医学的視点からみた外傷・障害予防となるトレーニング内容の指導も行っています。
投球動作は、最終的にボールに効率よくエネルギーを伝えるための全身の関節による運動連鎖の結果です。全身の何らかの異常から投球フォームが崩れ(例:肘下がり)、肩や肘に過剰な負担がかかり、障害をもたらすと考えられます。障害肩の代表的な異常所見として、関節唇損傷(SLAP損傷)や、靱帯損傷(プーリー損傷)、腱板損傷、骨棘形成(Bennett病変)などが挙げられます。障害肘としては内側側副靭帯損傷や骨棘形成、小中学生であれば上腕骨離断性骨軟骨炎が挙げられます。当院では投球動作において、最も安定したポジションとして知られるゼロポジション(肩甲棘と上腕骨の運動軸が一致するポジション)での診察を重要視しています。 ゼロポジションでの筋出力や肩甲骨の安定性の評価を行っています。
ゼロポジション
ゼロポジションでの筋力発揮が不安定な例
フォーム・筋力・体力の問題やオーバーユースであれば適切な休息、リハビリテーションにてフォームチェックやトレーニングの指導を行います。しかし、関節内外で物理的な破綻が生じ、身体機能の向上をもってしても疼痛が改善ない場合は手術にて病変部の修復が必要となります。当科では関節鏡を用いた低侵襲な手術と術前後のリハビリにて治療を行っております。
腱板とは、肩甲骨と上腕骨を繋ぐ筋(インナーマッスル)の総称であり、前方の肩甲下筋、上方の棘上筋、後上方の棘下筋、後方の小円筋と4つの筋から構成されます。腱板断裂は、ほとんどが上方の棘上筋腱および棘下筋腱に起こり、まれに前方の肩甲下筋腱の損傷を合併します。腱板断裂は腱板の退行性変化を基盤として主に50歳以上の中高年に好発し、多くは外傷を契機として発症し肩の痛みや動かしづらさ、脱力を主訴とすることが多いですが、高齢になるほど腱板自体の変性が進行するため、軽微な外力により断裂しやすくなります。実際、高齢者では外傷の既往を全く自覚していないことも少なくありません。
腱板
保存療法と手術療法がありますが、リハビリテーションや関節内注射などの保存療法に抵抗し、継続する肩関節の夜間痛、挙上時の疼痛、挙上困難を認める場合は手術療法が選択されます。また、明らかな外傷による断裂は手術となるケースが多いです。当院では鏡視下修復術を採用しています。腱板の断裂が極端に大きく短縮している場合は、縫合が不可能な事があります。その際は大腿部の筋膜を採取し移植する方法(上方関節包再建術)や棘下筋前進法・棘下筋回転移行を選択します。それでも修復不能な腱板断裂の場合は可動域や年齢、肩関節の変形を考慮しリバース型人工肩関節置換術を選択することがあります。
一度肩を脱臼するとその後も脱臼を繰り返すケース、脱臼はしないが恐怖感・不安感が残存するケースがあります。繰り返し脱臼する肩は反復性肩関節脱臼と呼ばれます。関節唇が損傷していることが多いのですが、関節包、関節窩、上腕骨が損傷している場合もあります。
鏡視下に関節の制動を行います。主な術式は鏡視下Bankart法ですが、ラグビーなどのコンタクトスポーツを継続される場合は再脱臼率の低い鏡視下Bankart&Bristow法を選択します。
手や肘の酷使で肘が痛くなる疾患です。肘の内側に痛みが生じた際は上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)、外側に痛みが生じた際は上腕骨外側上顆炎(テニス肘)と呼ばれます。内側の場合は回内筋・手関節屈筋群、外側の場合は総指伸筋・手関節伸筋群の腱・起始部に炎症や変性が起こります。治療は安静をしつつリハビリテーションや投薬、ステロイド注射を行い、それらが無効な場合は手術加療を行います。
当院では内側上顆炎に対しては直視下手術、外側上顆炎に対しては鏡視下手術を選択します。
変性した不良肉芽の切除、滑膜ヒダの切除を行います。
教授
西中 直也
NAOYA NISHINAKA
専門領域
●肩肘関節外科
●肩肘関節鏡手術
●肩のバイオメカニクス
●投球障害肩肘
認定医・専門医など
●日本整形外科学会専門医
●日本スポーツ協会公認スポーツドクター
●日本整形外科学会スポーツ医
●日本整形外科学会認定リバース型人工関節置換術施行資格医師
●身体障害者福祉法第15条第1の規定に基づく指定医
●日本肩関節学会代議員
●日本肘関節学会評議員
●日本整形外科スポーツ医学会 代議員
●JOSKAS日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会 評議員
●スポーツメディスンフォーラム世話人
●東京スポーツ整形外科研修会世話人
●神奈川上肢外科運営委員
●よこはまスポーツ整形外科フォーラム幹事
●よこはま肩を語る会幹事
●日本テニス協会医事委員
●日本テニス協会アンチドーピング委員
●千葉ロッテマリーンズ メディカルチェック担当医(~2019年)
●2008~2011年 川崎フロンターレチームドクター
●神奈川学童野球指導者セミナー担当医
●横浜野球肘検診推進協議会検診担当医
●2013年 日本整形外科スポーツ医学会 米国traveling fellow
●2019年 KSES(韓国肩肘学会)Traveling Fellow
●スポーツフォーラム21 the Golf 企画代表
●Journal of Orthopaedic Science Editorial board member
●臨床スポーツ医学編集委員
講師 副医局長
磯崎 雄一
YUICHI ISOZAKI
専門領域
●上肢・肩関節外科
認定医・専門医など
●日本整形外科学会専門医
●日本整形外科学会スポーツ医
●日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
●義肢装具適合等判定医
●日本整形外科学会専門研修指導医
●日本医師会認定健康スポーツ医
講師
古屋 貫治
KANJI FURUYA
専門領域
●上肢・肩関節外科
認定医・専門医など
●日本整形外科学会専門医
●横浜市野球肘検診担当医
●臨床研修指導医
兼任講師
鈴木 昌
MASASHI SUZUKI
専門領域
●肩関節外科
●肘関節外科
●スポーツ整形外科
認定医・専門医など
●日本整形外科学会専門医
●日本整形外科学会専門研修指導医
●日本スポーツ協会公認スポーツドクター
●日本整形外科学会認定リバース型人工関節置換術施行医師
2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | |
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肩関節脱臼・関節唇損傷に対する 鏡視下関節唇形成術 |
65 | 51 | 57 | 38 | 32 | 31 | 45 |
肩腱板断裂に対する鏡視下手術 | 81 | 55 | 74 | 79 | 100 | 62 | 78 |
肩関節拘縮に対する鏡視下関節授動術 | 14 | 23 | 23 | 11 | 20 | 17 | 26 |
人工肩関節(リバース型含む) ・骨頭置換術 |
20 | 17 | 24 | 22 | 15 | 8 | 18 |
投球障害肩に対する鏡視下手術 | 6 | 3 | 4 | 8 | 2 | 1 | 3 |
投球障害肘に対する手術 | 11 | 11 | 8 | 11 | 4 | 1 | 2 |
肘内外上顆炎手術 (鏡視下手術など) |
22 | 11 | 11 | 9 | 26 | 17 | 21 |
その他 肘関節の鏡視下手術 |
1 | 3 | 10 | 4 | 2 | 7 | 1 |
末梢神経に対する手術 (肘部管・手根管症候群) |
33 | 19 | 23 | 10 | 7 | 8 | 9 |
その他 | 53 | 70 | 54 | 53 | 48 | 25 | 24 |
合計 | 306 | 263 | 288 | 245 | 256 | 177 | 227 |
昭和大学藤が丘病院整形外科
〒227-8501 神奈川県横浜市青葉区藤が丘1-30
TEL:045-971-1151(代表)
昭和大学藤が丘リハビリテーション病院
〒227-8518 神奈川県横浜市青葉区藤が丘2-1-1
TEL:045-974-2221(代表)
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